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くい丸の支持力に影響を与える要因とは?

くい丸は、優れた施工性と高い支持力を兼ね備えた打込み杭ですが、その性能を十分に引き出すためには、支持力に関わるさまざまな要因を理解しておくことが重要です。本記事では、経験のない方でも実務に役立つ視点から、くい丸の支持力に影響する代表的な要因について解説します。

1. 地盤の強度と土質の影響

支持力に最も大きく関わるのが、地盤の強さ(固さ)です。地盤の固さを測る指標として「N値」が用いられます、N値が高いほど地盤は締まっていて強固とされ、たとえばN値が0〜4であれば「軟弱地盤」、5〜15は「やや軟弱」、15以上であれば「建物を支えるのに適した地盤」というイメージです。もちろん、N値が高くなるほど大きな建物を支える事ができる地盤となります。ただ、くい丸を施工するような浅い深度(数m程度)では、N値10未満が一般的といえます。 なお、ここでいう固い軟らかいとは、建物をその地盤に建てたときにどうか、という視点ですので、N値1や2の地面の上を人が歩いても問題ありません。 一般的には、砂質土よりも粘性土の方が支持力が高くなる傾向がありますが、くい丸を含めた浅層基礎では、その差が明確に出るとは限りません。くい丸に関しては土質による支持力への影響は考慮しなくても良いでしょう。

1.1 地盤調査の一例

これはSW試験による地盤調査報告の一例です。 現場はもともと畑だった場所なので、表層50cmまでは非常に軟らかい地盤であることが分かります。そこから2.5m程度まではN値4〜5前後のやや軟らかめの地盤が続きます。2.5mを超えるとN値も10を超え、しっかりした地盤が現れます。 こうした地盤では、表層の柔らかさをカバーするため、通常想定する根入れよりも50cm以上は深く打ち込むことをおすすめします。

1.2 N値と換算N値

やや細かい話になりますが、N値は標準貫入試験(ボーリング試験)によって得られますが、くい丸を使う際の地盤調査ではより簡便なSW試験(スクリューウェイト試験、旧スウェーデン式サウンディング試験)が用いられる事が多いです。この試験で得られた値は「換算N値」となりますが、通常はN値と同じものとして扱って問題ありません。つまり、N値が3の地盤と換算N値が3の地盤はほぼ同じ固さと考えて良いと言うことになります(換算N値が高くなるほどN値との乖離が大きくなるので注意して下さい)。なお、SW試験はJISで試験方法が規定されており、住宅工事など比較的小規模な工事の地盤調査として広く用いられる試験方法です。本記事では換算N値もN値と表記します。

1.3 盛土と切土

盛土(もりど)や切土(きりど)も基礎工事などでよく耳にする単語です。簡単に言うと、盛土は「別の場所から運んできた土でできた地盤」、切土は「もともとそこにあった地盤」と考えると良いでしょう。当然、長年に渡って土圧で締め固められた切土にくらべ、盛土はN値も上がりにくく、実際くい丸も効きづらい場合があります。「盛土だけど転圧をしっかり掛けたら大丈夫」とおっしゃる方もいらっしゃいますが、盛土への施工の際には地盤調査や現地調査で支持力を測ることをおすすめしています。

2. N値とくい丸支持力の関係性

N値が高くなるほど、くい丸の支持力も基本的には高まりますが、必ず比例するとは限りません。というのも、SW試験では25cmごとにN値が算出されるため、例えばくい丸を1m打ち込むときのN値というと、100cm÷25cm=4区間分の平均N値として考えることが一般的です。 極端にいうと、4区間全てのN値が5の場合でも、区間ごとのN値が1、17、1、1という地盤でも平均N値は5になります。 こうしたことから、平均N値でおおまかに捉えつつ、軟弱地盤の割合が高い場合には根入れをさらに深くするなどの対応が必要になります。

3. くい丸のサイズ、打設間隔

地盤条件が同じであれば、くい丸の直径や打ち込み深さ(根入れ長)が大きいほど、土中の表面積が増えることにより摩擦が増え、支持力が向上します。 地盤が軟らかいときには、根入れを深くする対応策が一番に思い浮かび、また有効な対策ではありますが、現地の施工条件によっては長尺のくい丸を打つことが難しい場合もあります。そうした場合には、例えばしっかりした地盤では1.8m間隔で打つところを、柔らかい地盤では半分の0.9m間隔で打つなどする対策が取られる場合もあります。

4. 施工方法の影響

施工のやり方も、くい丸の性能を大きく左右する重要な要素です。特に「どの角度で打ち込むか」は、支持力に直結します。基本的には、鉛直に打ち込むのが最も安定した支持力を得やすく、構造計算とも整合しやすいとされています。 関西大学との共同研究では、実際の工事現場でよく見られる斜め打ちよりも、鉛直に施工した場合の方が水平方向の支持力が高いという結果が得られています。なんとなく直感に反する結果にも感じられますが、杭を水平に引っ張ったときに、その力を受け止める土の量が多い方が有利だと考えると理解できる結果です。(土への力の伝わり方は様々な計算方法がありますので、興味のある方は調べてみて下さい) とはいえ、くい丸は摩擦杭である以上、鉛直にこだわりすぎて地盤を乱してしまっては本末転倒です。現場の状況に応じて、多少角度がついてしまっても無理なく地盤に沿って打設する方が、結果的に良好な支持力が得られる場合もあります。

5. よくある質問

質問:N値が2倍になれば支持力も2倍になりますか?
回答:そうとは限りません。これは、SW試験ではロッド(試験棒)に加える荷重と貫入量の関係から地盤の強度を推定するものであり、摩擦杭であるくい丸の実際の支持力メカニズムとは単純な比例関係にないためと考えられます。

質問:くい丸はどのくらいのN値まで打ち込むことが出来ますか?
回答:単純にお答えすることは難しいのですが、SW試験でN値25などが出ている地盤にも問題なく施工できているケースがあります。

質問:逆にN値いくら未満だとくい丸は使えませんか?
回答:使用目的によりますが、平均N値が3未満だと、補強を検討するか、別の基礎工法も検討の上でくい丸がベストであればお使い下さいとお答えするようにしています。

質問:SW試験からくい丸の支持力を算定する式はありますか?
回答:計算式はありますが、その算定式で計算すると非常に長いくい丸が必要になるなどしますので、現地試験で支持力を計測する事をお勧めしています。詳しくはお問合せ下さい。

質問:くい丸にロットの羽根のようなものを溶接すると抜けにくくなりませんか?
これは非常に良く頂く質問で、多くの方の感覚に沿うものだと思います。しかし、実は必ずしもそうなるとは限りません。打ち込みの際に羽根の影響で地盤が乱れ、かえって杭と地面の摩擦が低減します。実際の試験では、羽根付きのくい丸が標準品の約半分の支持力しか得られなかった事例も報告されています。


くい丸の支持力は、地盤の性質、設計条件、そして施工方法という複数の要素が重なり合って決まります。事前の地盤調査や適切な杭選定、丁寧な施工によって、くい丸の性能を最大限に発揮し、安全性と信頼性を両立させた基礎を実現しましょう。

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