くい丸の歴史は1994年から始まりました

発売間もないくい丸を展示会に出展した時の様子
まだ日本中にバブル崩壊の暗い影が残っていた1994年。
当時建材メーカーの下請工場だった君岡鉄工株式会社(現・株式会社くい丸)は、先の見えない時代を生き抜くために、自らの手で未来を切り拓こうとしました。「自分たちが作った製品を、現場で働く人々に使ってほしい」その想いを胸に、当時の社長・君岡誠治氏は図面を引き始めます。
鉄工所の3代目として培った長年のノウハウと経験を総動員し、試作に明け暮れました。そして生まれたのが、両端に独自の加工を施し、繰り返し使える画期的な杭、くい丸です。
当時は曲がった単管パイプを短く切って杭にする単管杭が当たり前。現場に詳しい人ほど「杭にお金を払うなんてありえない」という反応だったといいます。発売当初の売り上げはわずか100本ほど。それでも君岡氏は、「たった1本でも売れたのなら、そこに市場は必ずある」と確信したと語ります。

東海道新幹線 レール基準杭施工の様子
発売後、少しずつ、しかし確実に、現場で仲間を増やしていったくい丸。やがて長野オリンピックや東海道新幹線といった大きな舞台でも使われるようになり、その存在は全国に知られていきます。
固い地面にも負けず、何度でも使え、しかも抜けにくい。その実直な性能は、工事現場を超えて、農業や鉄道、大学の研究など、さまざまな場面で必要とされるようになりました。

在来線の線間防護柵として。 古いタイプのくい丸シールが貼られています。
「安全を支えるものだからこそ、品質を第一に作りつづけたい」その一心で、創業以来ずっと国内生産にこだわってきました。2006年には品質マネジメントシステムの国際規格であるISO9001を、2008年には環境マネジメントシステムの国際規格であるISO14001を取得。品質と環境への真摯な取り組みは、確かな製品づくりの基盤となりました。
2016年には栃木県宇都宮市に新工場を設立。2022年には、日本の杭として初めてグッドデザイン賞を受賞しました。派手さを求めず、ただ機能を突き詰めた末に生まれた“美しさ”が認められた瞬間でした。また同年、累計販売本数が1,000万本を突破。
くい丸は、決して現場で目立つ存在ではありません。けれど、足元で安全を支えるその役割は欠かせない。
だからこそ派手ではないけれど、誠実に、真面目に。そんな姿勢で歩んできたからこそ、今日もまた信頼される杭であり続けています。そしてこれからも、くい丸は変わりません。「一本でも誰かの役に立つのなら」――その想いを胸に、コツコツと、お客さまの安全を支える製品を届け続けます。

株式会社くい丸 本社宇都宮工場