くい丸の強度が十分かどうかは「設計」で決まる
1. くい丸の強度は設計で決まる
くい丸の強度が十分かどうかは、設置物を必要な期間、安全に支持できるかどうかという点にかかっています。 単に「くい丸を打ち込めば良い」というものではなく、確実な強度を得るには、綿密な計算と計画に基づいた設計が欠かせません。
2. 「基礎ありき」ではなく「上物ありき」
くい丸の設計においては、「基礎から考える」のではなく、まずは設置物(上物)から考えることが基本です。 上物の重量や形状、風圧面積などを把握し、それに応じた支持力をもつ基礎を計画することが求められます。
2.1 上物=設置物にかかる荷重を考える
くい丸の強度を適切に設計するためには、設置物にかかる荷重を正確に把握することが不可欠です。荷重には主に以下のような種類があります:
- 固定荷重(設置物自体の自重)
- 積載荷重(積まれた物や積雪など)
- 風荷重
- 地震荷重
これらの荷重を求める方法としては、以下の2つが代表的です。
2.1.1 過去の経験から推定する
過去の類似構造物の施工経験をもとに、おおよその荷重を推定する方法です。 簡易な方法ではありますが、十分な経験と判断力が求められ、安全側に余裕をもって設計する必要があります。
2.1.2 構造計算で求める
図:構造計算の一例
コンピューターシミュレーションにより、建築基準法や各種設計基準に基づいた荷重条件や係数を使い、設置物にかかる荷重を数値的に計算する方法です。 過剰な安全設計によるコスト増を防ぎつつ、必要な安全性を確保できるため、重要な構造物では構造設計技術者による検討が有効です。
2.2 それに耐える力の基礎を作る
荷重が明らかになったら、それに耐えるための支持力を持つくい丸を選定し、適切な配置・本数・根入れ長を設計します。 この際、設計に「余裕」を持たせることが大切です。
たとえば、100kgの引き抜き荷重がかかる場所に、100kgちょうどで引き抜けるくい丸を使用してしまうと、施工誤差や突発的な強風によって危険な状態になる可能性があります。 そのため、設計では「安全率」を設定して余力を確保します。
安全率とは、実際にかかる荷重に対してどれだけ余裕を持たせるかを表しています。 たとえば安全率3であれば、100kgの荷重に対して300kg以上の支持力が求められることになります。
ただし、安全率を高く設定すればするほど安全性は増しますが、同時に材料費や施工費も増加します。 くい丸のような地盤基礎では、安全性とコストのバランスが重要です。
当店のお客様の多くは、安全率1.5〜2程度で設計されているケースが多く見受けられます。 なお、安全率は法令や業界規格により指定されている場合もあり、その際は必ずそれに準拠した設計が必要です。規定がない場合でも、余裕を持った設計により高い安全性を確保することができます。
2.3 不同沈下への配慮
小さな看板などではあまり問題になることはありませんが、太陽光アレイなどある程度の大きさの構造物を設置する場合は、(同じ荷重がかかっても)基礎毎に沈下量が異なる「不同沈下」が発生することがあります。不同沈下は設置物の構造が歪む原因となり、思わぬ事故や不具合の原因となります。地盤調査結果などをもとに、地盤の軟らかい場所はくい丸の根入れを深くするなど対策を検討して下さい。
このようなリスクを避けるためには、地盤調査をもとにくい丸の本数や打設間隔を適切に設計することが重要です。