太陽光発電など、長期間設置したままになるものの基礎にくい丸をお使い頂く事が増えてきています。そんな時に問題になるのが「くい丸がどのくらいの期間もつのか」です。今回はメッキの性能の観点から考えていきたいと思います。

くい丸の表面は「溶融亜鉛メッキ」です

 くい丸の本体は鉄パイプで、表面にさび止めとして溶融亜鉛メッキが施されています。溶融亜鉛メッキは次の特長があります。

1)固くて緻密な被膜で鉄が空気に触れることを防ぐ
2)メッキの膜に若干の傷が入っても鉄が錆びにくい


2は、金属の一種である亜鉛が鉄より早く酸化反応(=サビ)てくれることを利用したさび止めの方法(難しい言葉ですが”犠牲防食”と言います)です。上記のような特長により、塗装などに比べ効果的にサビを防止できることから、多くの鉄製品に使われています。

溶融亜鉛メッキのさび止め効果について

 ではその溶融亜鉛メッキでどの程度サビが防げるのでしょうか。サビの発生に影響を与える要素は次のようなものが考えられます。

1)メッキの耐久性(=基本的には亜鉛の付着量)
2)設置された場所の特性(地盤の性質や気候、大気条件)

 (一社)日本溶融亜鉛鍍金協会では、実験結果などから上記の要素を盛り込んだメッキの耐用年数を数式化しています。

「耐用年数=亜鉛付着量(g/m2)÷ 腐食速度(g/m2年)× 0.9」

このうち、亜鉛付着量はくい丸の場合は本体パイプの性能報告書から分かります。
腐食速度は環境により異なるのですが、日本亜鉛鍍金協会では
・都市・工業地帯
・田園地帯
・海岸地帯
の3つ地帯に分けて設定しています。

ちなみに、海岸地帯が一番腐食速度が速く、一番遅い田園地帯の約4倍に設定されています。

くい丸本体の亜鉛付着量は?

 くい丸の本体には、優れた品質の国産大手メーカー製鉄パイプを使用しています。その検査証明書(流用防止のためモザイク処理しています)には、メッキの亜鉛付着量が記載されています。ちなみに、亜鉛付着量の検査はJISに定められていませんので、あくまで自主検査ということになります。

これによると、亜鉛付着量は
メーカーA)最小139、最大163g/m2
メーカーB)最小140、最大156g/m2
となっています。

国産ではないパイプの中には、かなり付着量が少ないものものもあるらしいとの話も聞こえてくる中、さすが国産はかなりきっちりコントロールされているという印象です。

亜鉛付着量から耐用年数を推定

上記の亜鉛付着量を、(一社)日本溶融亜鉛鍍金協会の耐用年数計算式をグラフ化したものに単純に当てはめてみると、以下のようになります。

(1)はメーカーA、(2)はメーカーB、(3)は厚メッキ版(推定値)となります。

グラフを読む限り、太さ48.6mmの通常品の場合で、都市・工業地帯において約20年、田園地帯だと約35年前後ということになろうかと思います。厚メッキになると、都市・工業地帯において約37年、田園地帯だと約70年となります。

太陽光のように20年以上の設置が必要なものの場合は、やはり厚メッキ版をお選び頂く事が無難かも知れませんね。

もちろん、上記は単純な推定値であり、当店もメーカーもこの数値を保証するものではありません。店長の感覚からしても、やはり厚メッキとはいえ70年も持たないだろうという感じはします。あくまで一つの目安、参考値としてとらえて下さい。

沿岸地帯でのサビ対策

グラフを見る限り、沿岸地帯ではどうしても長期間メッキが耐えることができませんので、メッキの上にさらに塗装するなど、塩害の影響を減らす対策が必要になってくると思います。

ステンレス製のくい丸も製作可能です

 これまで述べてきたメッキや塗装など、表面に皮膜を作ることによってサビを防ぐ”表面処理”に対して、そもそも錆びない素材を使う、というアプローチもあります。ステンレス製のくい丸は、本体や両端の金具から、溶接ワイヤーに至るまで総ステンレス製で製作可能です。在庫品ではないので特注扱いとなりますが、農業関係などで引き合いを頂く事もあります。ご検討中のお客様がいらっしゃれば是非お問い合わせ下さい


今回もお読み頂きありがとうございました。



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